In My Book

コトバときどき私

「ぬ」の授業のゴールを生み出すまでの私の頭の中

プライベートレッスンで、テキストを使用しない学習者さんがいます。

その学習者さん、次のレッスン依頼をメールでくれます。

 

「次のレッスンは否定の「ぬ」でお願いします!」

 

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「ぬ」と言われて、とても困りました。

否定の「ぬ」で60分!?

 

学習者さん

・N1保持はしていないものの、とても上手。

・日本で働くビジネスマン。

英語圏の学習者

・今の日本語をブラッシュアップしたい(特に仕事で使いたい)

最初はゴールが作れずに、とりあえず「風立ちぬ」から準備を進めました。

風立ちぬ。は立つのか立たないのか。

答えは「たった」なんだけど、

授業準備を進めるうちに、

完了の「ぬ」を入れる必要性を感じられなくなりました。

 

だって、完成、願望、並列の「ぬ」を使うことがないから。

(日本人もないよね)

学習者さんのニーズに合っていない。

 

 

おまけで考えていた「ぬ/ず」の違いにしようかな~と思ったり。

だけど、それも一言で終わるし、調べればわかります。

 

ならば、もう、状況を限定して、

「ぬ」を使うようなタイミングを考えよう。

そして絞り出したのが

「上司に対して起きた問題について連絡ができる」。

「ぬ」は書くことが多い。

(話すとしたら「解せぬ!」とか?…言わんか)

 

とりあえず、「ぬ」を使って文を作ることにしてみました。

 

予期せぬエラーが起こった

絶対に許せぬ!

思わぬ結果になった

いらぬ心配をかけた

絶対とは言えぬまでも~

この世のものならぬ~

暗くならぬうちに

泣かぬばかりにお願いする

知らぬ間に~

 

この中からビジネスで使えそうなもの、

使えなさそうなもの…

を分けてみるけれど、

 

ないねーないね。ないない。

うまく分けられませんでした。

 

もうこれは「ビジネスメール・ぬ」で検索してみるしかない!

と思って検索して出てきたものが、

メールの最後の表現でした。

 

「今後とも変わらご支援・ご高配を賜りますよう、お願い申し上げます。」

 

きた!これだ!

メールの書き方も知りたいと言っていた!これしかないわ!!

今日のゴールは

お客様への特別なメールを丁寧に終わらせることができる」

にしよう!

 

ということで、ようやくゴールが決まりました。

ゴールが決まってからの授業準備はさくさくです。

 

せっかく授業準備したものもあるので

それをおまけとしてつけたりも。

 

授業準備にかかる時間、

この考える時間を含めると10時間くらいかかってます。

1時間の授業に…えへへ。

でも行動中心アプローチを勉強しなかったら

もっともっと時間がかかってたかもしれません。

 

結果は、それなりにうまくいったと思います。

学習者さんとのニーズのマッチングがうまくいったようで

メールに対しての話題がたくさん出てきました。

「読まずに(飛ばして)いるところなのに、

実は読んでいるところですよね」

と。そうなんですよね。

「何卒よろしくお願いします」でももちろんOKですが

「今後とも変わらご支援~」の方がより改まった表現になり

特別な気持ちを表すことができます。

 

上記以外にも「ぬ」を使うメール練習を行い

文作で終了。

理解の早い学習者さんなので

終わる時にはしっかりマスターしていました。

 

「次のレッスンは否定の「ぬ」でお願いします!」

みなさんだったらどんなレッスンにしますか?

この話で日本語の先生方とお話をしたら

とーっても楽しそうですよね。

いい案があればぜひぜひ教えてください。